さあ、物語も佳境に入ってきました。
前回のブログの最後で、次回は「勇気づけ」についてお伝えすると書きました。
その前に、以前お伝えしたアドラー心理学の大切な考え方の一つである「課題の分離」について思い出していただきたいと思います。
自分の影響力が及ぶ課題を「自分の課題」、そして自分の影響力の及ばない課題を「他者の課題」として分け、他者の課題には介入しないという立場を取るべきだという考え方です。
しかし、あなたの大切な人が悩み、苦しんでいるのを放っておくことはできません。
そこで、アドラーはその人が課題から逃げずに、自ら課題に立ち向かおうとする気持ちを持てる様にそっと手を差し伸べること、間接的に援助をすることを「勇気づけ」と名づけました。
あくまでも、直接的な行動ではなく間接的に、そっと行動を促すように。
勇気づけとは、その人が前に進む勇気を与えることです。
叱っちゃダメ、褒めちゃダメ
アドラーは教育によって世の中を変えようとしていました。その根底に流れている考えは、
「あらゆる対人関係は、対等な横の関係」
であると言っています。「対等な横の関係」です。
ですから、叱っても、褒めてもダメだと言っています。
なぜでしょう?
対人関係において人に行動を起こさせるために、叱るや褒めるといった行為は一般的ですが、その行為には
叱る | 上下の対人関係を前提としている |
褒める | 能力のある人が能力のない人に下す評価 |
といった側面があると指摘しています。
このように縦の対人関係(評価)の中において、自分に価値があると感じることはとても難しいことだと思います。
勇気づけとは、あくまでも対等な横の関係においてのみ、有効に働くのです。
勇気づけの魔法の言葉
では、対等な横の関係において自分に価値があると感じることができる瞬間とは、どの様な瞬間でしょうか。
人は他人の役に立てたときに、自分には価値があると感じます。つまり、他者に貢献できたと感じることができた瞬間が、自分に価値があると実感する瞬間です。
では、どんな時に他人の役に立てたと実感できますか?
それは、「ありがとう」と言われた時ではありませんか?
「ありがとう」は、上下の関係も、有能無能の関係もなく、ただただ相手がしてくれたことに対して、純粋に感謝を伝える言葉です。
お互いに「ありがとう」と言える関係こそ、対等な横の関係ではないでしょうか。
「私は誰かの役に立っている」という思いだけが、自分には価値があるんだと実感させてくれると、アドラーは言っています。
相手の貢献に対して「ありがとう」ということが、あなたと私は対等であることを伝え、さらに相手が自分に価値があることに気づき、相手に前に進む勇気を与えることができる・・・
「ありがとう」は、そんな魔法の言葉だったんですね。
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